今日、38歳になりました。1988年9月23日生まれです。
38歳という数字をどう受け止めるかはさておき、ふと防湿庫を見ると、自分と同じ1988年に縁のあるカメラやレンズが何台も、何本も並んでいます。
Leica M6、Summicron 50mm、Summilux 35mm、Elmaritの21mm、90mm、135mm。そしてライカではありませんが、オリンパスのO-Productもあります。
最初から「生まれ年の機材」を集めようと思っていたわけではありません。
そういう選び方は以前から面白いと思っていましたが、本当に自分の機材選びに取り入れるきっかけになったのは、1988年の番号帯に当たるSummicron 50mm 3rd Germanyをたまたま見つけたことでした。
たまたま見つけた、1988年のSummicron 50mm
ヴィンテージカメラやレンズを見ていると、製造年はどうしても気になります。
モデルの世代や仕様を確認するためにシリアル番号を見ることもありますし、同じモデルでも製造時期によって細かな違いがあります。
そんな中で見つけたのが、1988年のシリアルに当たるSummicron 50mm 3rd Germanyでした。
「生まれ年のレンズか」
と思いました。
ここでいう「1988年のライカ」は、主に製造番号資料で1988年に分類される個体を指しています。番号の割り当て年と実際の製造・出荷年は必ずしも一致しないので、厳密な誕生日が分かるわけではありません。そのうえで、自分の中では「同い年」として楽しんでいます。
ただ、その時点では大げさなコレクションを始めるつもりはありません。
一本買ってみようかな、くらいの気持ちでした。
それでもSummicron 50mmなら、仮に「生まれ年」という遊びに飽きても困らないだろうと思ったのです。
50mmは使いやすい焦点距離ですし、Summicronならレンズとしても十分に実用できます。
M型だけでなく、対応するアダプターを使えばミラーレスでも使える。
つまり、かなり「腐りにくい」選択でした。
コレクションとしてだけでなく、普通に撮影に使える。
それが最初の一本としてちょうどよかったのだと思います。
最初はミラーレスで使い始めた
手に入れたSummicron 50mmは、最初からフィルムライカ専用として使っていたわけではありません。
まずはミラーレス機に装着して使い始めました。
これが意外とよかった。
1988年のレンズを、現代のデジタルカメラに付けて撮る。
少し不思議な組み合わせですが、使ってみれば何も難しいことはありません。
デジタルなら撮った直後に描写を確認できますし、フィルムより気軽に持ち出せます。
「生まれ年だから持っているレンズ」ではなく、ちゃんと普段使えるレンズになりました。
ここで、生まれ年の機材に対する自分の考え方が決まった気がします。
飾るためだけにはしない。
実際に使えるものを選ぶ。
そして、自分と同じ時間を過ごしてきた道具として楽しむ。
この三つです。
写真は、時間を残すものだと思っています
私は以前から、写真は「時間」に関係するものだとうっすら考えていました。
写真に写っているのは光です。
ただ、その光が意味を持つのは、そこに時間が閉じ込められているからではないでしょうか。
家族写真を何年か経ってから見返すと、写っているもの以上に、その頃の生活や空気を思い出すことがあります。
街角の写真も同じです。
そのときは何でもなかった看板が、10年後にはなくなっている。
何となく撮った車が、いつの間にか街から姿を消している。
写真は、撮った瞬間には現在なのに、シャッターを切った直後から過去になっていきます。
だったら、その写真を撮る道具にも時間があっていい。
1988年のカメラやレンズが、1988年に生まれた自分の手元にやってきて、2026年の景色を撮る。
そう考えると、少し面白い。
もちろん、かなり妄想です。
でもヴィンテージ機材には、そういう妄想を許してくれる余白があります。
気がつけば、1988年組が増えていました
最初はSummicron 50mm一本でした。
それが少しずつ増えていきました。
現在手元にある1988年の製造番号帯に当たるライカと、1988年に発売されたO-Productは、次のとおりです。
- Leica M6 Big Name
- Summicron 50mm 3rd Germany
- Summilux 35mm 2nd
- Elmarit 21mm
- Elmarit 90mm
- Elmarit 135mm
- OLYMPUS O-Product
こうして並べると、なかなか増えています。
「生まれ年縛りをすると無駄に増えにくい」という話をするつもりなのですが、その説得力が少し怪しくなるくらいにはあります。
ただ、自分の中では明確なルールがあります。
「1988年なら何でもいい」ではない
生まれ年なら何でも集めているわけではありません。
まず、実際に使えること。
これはかなり大事です。
たとえばレンズなら、対応するデジタルボディでも使える。
フィルムでも使える。
そして、その焦点距離を自分が使う。
そういう実用性があるものを優先しています。
だから、最初の一本がSummicron 50mmだったのは、結果的にかなり正解でした。
仮に「1988年だから」という理由に飽きたとしても、Summicron 50mmというレンズ自体の役割は残ります。
逆に、1988年だからという理由だけで、使わない機材を増やすつもりはありません。
そこまで行くと、趣味というより在庫管理です。
仕事で十分です。
1988年は、ライカにとっても少し面白い年だった
後から気づいたのですが、1988年という年そのものも、ライカの歴史を見ていくと面白い時期です。
ライカ公式の年表によると、ライツ社の写真部門は1986年にLeica GmbHとして再編され、1988年にはウェッツラー近郊のゾルムスに新しい工場を構えています。
つまり1988年は、長く続いたLeitzの時代から、「Leica」という企業とブランドがより明確に独立していく転換期のひとつでもありました。
自分が使っているM6も、この時代を代表する存在です。
M6そのものは1984年に登場していますが、1980年代後半の個体を追っていると、刻印や外観、限定仕様など、いろいろな違いに出会います。
自分が持っているBig Nameもそのひとつです。
同じM6という名前なのに、個体を追っていくと意外なほど話が広がっていく。
自分の生まれ年だから選んだだけなのに、調べていくとエピソードが次々に出てくる。
そういうところも、1988年を気に入っている理由です。
生まれ年縛りは、買う理由であり、買わない理由でもある
面白いのは、生まれ年の機材を集めるようになってから、むしろ無駄に機材が増えにくくなったことです。
ヴィンテージカメラやレンズは、欲しくなる理由をいくらでも作れます。
同じ50mmでも世代が違う。
同じ世代でも製造国が違う。
鏡胴が違う。
コーティングが違う。
刻印が違う。
少し調べると、「これは別物です」と言えてしまいます。
非常に危険な世界です。
そこで「1988年」という条件を一つ入れる。
すると、
「これは欲しいけど1988年じゃない」
「状態はいいけど年代が違う」
「役割が被るから今回はいい」
という判断がしやすくなります。
つまり1988年という条件は、集めるための理由であると同時に、買わないための理由にもなっています。
これは思っていた以上に大きな効果でした。
それでも買えないものはある
もちろん、製造番号資料で1988年に分類されるライカを全部揃えられるわけではありません。
たとえばNoctilux 50mm f/1。
そして35mm Summilux-M f/1.4 Aspherical、いわゆるDouble Aspherical。
Noctilux 50mm f/1には製造番号資料で1988年に分類される番号帯があり、Double AsphericalにもLeitz Photographica Auctionが1988年と記載した出品例があります。こうした年代表記も、個体の完成した年を保証するものとは分けて見ています。
欲しいか欲しくないかで言えば、欲しい。
生まれ年の個体があれば、当然気になります。
ただし、この辺になると価格という極めて現実的な問題があります。
「生まれ年だから」という理由だけで突破できる金額ではありません。
世の中にはロマンより強いものがあります。
残高です。
なので、この辺は縁があれば。
そして財布が許せば。
それくらいでいいと思っています。
これからも、1988年の機材で今を撮る
今探しているのは、1988年のElmarit 28mmです。
28mmは実際の撮影でも使いやすく、今の機材構成に加えても役割があります。
もう一つ加えたいと思っているのが、Summilux 75mmです。
75mm Summiluxにも、専門店の販売記録で1988年と記載される個体があります。
自分にとって75mmという焦点距離は50mmとも90mmとも少し違っていて、ポートレート寄りでありながら、M型でも日常に持ち出してみたい距離です。
すでに持っている1988年組とも使い分けながら、生まれ年だからという理由だけでなく、実際に使うレンズとして加えたいと思っています。
もちろん、1988年なら何でも揃えるつもりはありません。
コレクションを完成させること自体が目的ではないからです。
むしろ、少しずつ見つけていくくらいがちょうどいい。
そして、フィルムだけで使うつもりもありません。
自分はデジタルボディも使っています。
数十年前に作られたMマウントレンズを、対応する現代のデジタルボディに装着できるのは、このシステムの面白さのひとつです。
1988年のレンズで2026年を撮る。
それでいい。
古いレンズだから、古い撮り方をしなければいけないわけでもありません。
むしろ、自分と同じだけ時間を過ごしてきた道具で、今の時間を残していく方が面白いと思っています。
38歳の自分と、38歳のカメラ
ヴィンテージ機材には、もっと合理的な選び方があります。
状態、価格、修理性、描写、希少性、将来的な価値。
どれも重要です。
「自分と同じ年だから」という理由は、そのどれにも入りません。
でも、自分の所有物くらい、そういう理由で選んでもいいと思っています。
1988年のカメラとレンズ。
1988年に生まれた自分。
それぞれ別の場所で時間を重ねてきて、今は同じ場所にある。
もちろん、機械に人生があるわけではありません。
でも、「同じ時間を過ごしてきた」と勝手に思うくらいは自由です。
写真は時間を残すもの。
そしてカメラやレンズ自身も、時間を積み重ねていくものです。
だからこれからも、生まれ年の機材はできるだけ飾らず、実際に使っていこうと思っています。
1988年のレンズで、2026年を撮る。
10年後にその写真を見返したら、自分は48歳。
同い年として選んだレンズも48歳です。
どちらが先にオーバーホールを必要とするか。
そこだけは、あまり深く考えないことにします。
O-Productの発売年はOM Digital Solutionsの製品史を参照しています。機材の世代表記は数え方によって異なる場合があります。本稿では手元の機材の呼称に合わせています。







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